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Drs’ voice, パーキンソン病

パーキンソン病が完治することはあるのか

パーキンソン病は現在の治療法では完治するのは難しいとされています。しかし、適切な薬物治療、リハビリテーション、手術を受けることで病気の進行を抑えることはできます。患者さんの中には思うように動くことができないため、家に引きこもりがちになってしまう方もいますが、それでは筋肉や骨が一層弱ってしまい症状が悪化してしまいます。また、うつや認知症の発症にもつながります。前向きな気持ちで活動することが治療にはとても大切です

ドパミンを増やす方法

行動で増やす

ドパミンは何かの「報酬」を得て幸福を感じた時に脳から多量に分泌されます。具体的には以下のような活動を意識的にすることで、ドパミンの分泌を促すことができます。

  • 目標をたてて達成する
  • 読書や絵画などの芸術に触れて感動する
  • 美味しいものを食べて満足する
  • 音楽を聴いたり温泉に入ったりしてリラックスする

食事で増やす

ドパミンの原料は「チロシン」というアミノ酸であり、普段の食事で以下のようなチロシンを多く含む食品を意識して取るようにすることもドパミンを増やすことにつながります。

  • チーズなどの乳製品
  • 納豆、豆腐、きな粉などの大豆製品
  • 落花生、アーモンドなどのナッツ類
  • クロマグロ、タラコ、かつお節などの魚介類

また、コーヒー、緑茶、紅茶に含まれるカフェインやポリフェノールパーキンソン病の予防に効果があったという報告もあります。

運動をする

パーキンソン病になると、筋肉が固くなって体を思うように動かせなくなったり、体のバランスがとりにくくなって転倒しやすくなるといった運動障害がみられます。そこで、ウォーキングや体操などの適度な運動を日頃から行い、筋力や関節を強くしておくことは非常に重要です。また運動をすることでストレス発散や達成感を得ることもできるため、脳からのドパミン分泌を促すことにもつながります。

パーキンソン病の症状が表れてしまった時はどうすれば良い?

症状が出てしまった場合

診断の流れパーキンソン病と疑われる症状が出た場合は、まず病院を受診し医師の診断を受けましょう。パーキンソン病かどうかは、①~④を確認し、医師が診断します。

パーキンソン病で代表的な、以下の運動症状があるかを確認します。

  1. 左右差のある安静時振戦(手足や顎が震える)
  2. 筋固縮(手足の筋肉が動かしにくくなる)
  3. 動作緩慢(動きがゆっくりになる)
  4. 姿勢歩行障害(小刻みな歩行をする、バランスがとりにくくなる)

パーキンソン症状を起こすような薬は飲んでいないか?

ドパミンの働きを抑える作用のある抗精神病薬や胃薬・吐き気止め、一部の血圧を下げる薬を服用していると、パーキンソン病と似た症状があらわれることがあります。

CTやMRIで脳に異常はみられないか?

検査で大脳の萎縮や脳梗塞が確認された場合はパーキンソン病以外の別の病気になります。パーキンソン病の場合はCTやMRIで脳の異常は認められません。

パーキンソン病治療薬で症状の改善はみられるか?

最後に、L-dopaやドパミン受容体刺激薬を試しに服用し、改善がみられた場合はパーキンソン病と診断されます。

その他の検査

  • 【MIBG心筋シンチグラフィー】

心筋にとりこまれるMIBGの量が低下しているとパーキンソン病である可能性が高くなります。

  • 【ドパミントランスポーター(DAT)シンチグラフィー】

パーキンソン病の場合、脳内に取り込まれるDATの量が低下していたり、集積量が左右非対称になります。

  • 【嗅覚検査】

パーキンソン病の場合、早期から嗅覚が落ちます。

 

治療の流れ

①:リハビリテーション

まずは、運動障害で日常生活に支障が出ていないかを確認します。軽症で日常生活に問題がない場合は、運動機能を維持するために、医師や理学療法士の指導のもと、筋力や関節を強くするリハビリテーションを行います。

②:薬物治療病状が進行

ドパミンを補充する薬物治療を開始します。L-dopaやドパミン受容体刺激薬から服用を開始しますが、患者さんの年齢や病状、副作用の発現などを考慮して、医師が最適な治療薬を選択していきます。

③:手術薬物治療で改善が不十分な場合もしくは副作用で薬物治療の継続が困難な場合

この場合は手術が選択されることもあります。運動障害や症状の日内変動、ジスキネジア(無意識に手足や口が動いてしまう症状)を改善する効果があります。

脳深部刺激療法

パーキンソン病は、脳の一部(淡蒼球)が活性化し、必要以上に運動に抑制をかけるためにスムーズな動きができなくなっています。そこで、脳に電極を埋め込んで電気刺激することにより、活性化された神経細胞の活動を抑えます。体に異物が入るデメリットはありますが、手術に伴う合併症が少なく、刺激を調整できるメリットがあります。破壊術不必要に活性化された神経細胞を直接、熱で破壊します。手術は1回で完結しますが、脳内組織を破壊してしまうため不可逆な合併症を引き起こす場合があります。L-dopa服用である程度の効果がある人、また年齢が若い人の方が、手術効果が高い傾向があります。しかし手術はドパミン神経が壊れるのを防いでくれるものではないので、手術後も症状は徐々に進行します。

パーキンソン病の治療についてまとめ

パーキンソン病は、このように適切な薬物治療、リハビリテーション、手術を受けることで病気の進行を遅らせることが可能です。また最近では、iPS細胞で作ったドパミン神経を移植する臨床試験も行われています。他にも、ドパミンを作り出す酵素や神経を成長させる遺伝子を脳に導入する治療も一定の成果を挙げています。さらにパーキンソン病の脳内に蓄積する異常な物質を除去するワクチンの臨床試験も実施されています。これらの治療法の有効性・安全性が確認されれば、パーキンソン病治療の選択肢がさらに増えていくでしょう。諦めずに、前向きな気持ちで治療に向き合っていきましょう。

参考文献

病気が見えるvol.7脳・神経(株式会社メディックメディア発行)

パーキンソン病診療ガイドライン2018(日本神経学会)

・Stacey E.Seidl,et al.Theemerging role of nutrition in Parkinson’s disease.Front.AgingNeurosci.2014;6:36・TanakaK,etal.Intake of Japanese and Chinese teas reduces risk of Parkinson’s disease.Parkinsonism Relat Disord. 2011; 17:446-450.

・織茂智之;パーキンソン病の最近の検査,治療日老医誌, 2016

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