2023年に医学雑誌「HPB」で発表された論文です。
「膵切除を受けた患者さんの術後合併症のリスクとして大麻は考慮すべきか?」をテーマに、大麻摂取による術後合併症のリスクを、タバコの喫煙と比較しながらデータにした論文になります。
みていきましょう。
【背景】
・大麻は世界で最も広く利用されている薬物、いわゆるドラッグであり、特に北米では約15%程度の使用経験があり、約1500万人もの成人が毎日摂取していると言われている。
・大麻の潜在的な利用者が増加し、普及しているにも関わらず、大麻が手術にどのような影響を与えるかは研究が進んでいない。
・大麻使用が術後にどのような影響を与えるのか医師もわかっていない。
どこでも生える草ですので、世界中で広く利用されるのはなんとなく理解できます。
ただ普及しているにも関わらず、実際に人間の体になにがどう起こっているのかはまだまだ医学的にわかっていないし、手術にどう影響するかなんて・・・医師もわからないので調べましょうということでしょうか。
【方法】
・コロラド州で2017年~2020年に膵臓手術を受けた患者さん537人を対象としてます。
・537人のうち、膵全摘術、腫瘍核出術、緩和手術、手術中止を除く、486人が対象で、膵頭十二指腸手術を受けた患者さんが346人、尾側膵切除を受けた患者さんが140人であった。
・大麻を摂取している、摂取していた人は104人で、現在進行形で摂取している人は84人で、タバコを喫煙せずに大麻を摂取している人は48人であった。
486人のデータをまとめるとともに、タバコと大麻の使用の有無で手術後の合併症のリスクが上昇するかどうかを比較検討しています。
【結果】
4つのグループ(タバコも大麻もやらない人、タバコだけの人、大麻だけの人、タバコも大麻もな人)で比較しています。
統計学的有意差は認められませんが、大麻だけ摂取している人は他のグループと比較して、合併症の割合が低いことがわかります。
大麻の摂取に関わらず、タバコを喫煙している人は、合併症の割合が高くなる傾向にあります。
タバコは、健康という点では、1つも良いことがありませんので、比較対象にあがりやすいのかなと。
改めてお伝えしますが、タバコを吸うと間違いなく寿命が縮まります。
自分は嗜んでいますし、1番右側になります。
【考察】
膵臓の手術を受けた患者さんが対象になったのは、膵臓手術の難しさからくる合併症の割合の多さがあるでしょうか。
消化器外科の中でも膵臓の手術は非常に難易度が高く、特に「膵頭十二指腸切除術」は、消化器外科手術のすべてが詰まった手術なので、他の腹部臓器の手術と比較して合併症の割合が多くなってしまいます。
明らかな統計学的有意差はないですが、大麻のみを摂取していた患者さんの術後合併症の割合が総じて低いのには良い意味で驚かされました。
大麻によって調節機能が保たれているからでしょうか、細胞が元気なのかはわかりません。
日本でできることといえば、CBDを術前術後2週間だけでも摂取すれば合併症の割合は減ると思います、増えることだけはないです。
大麻関係ないだろ、と言われたってかまいませんが、合併症が起きてしまうと患者さんのQOLと予後に関わりますし、誰も幸せになりません。
普段から大麻を摂取されている患者さんも安心して手術を受けることにつながればと思います。