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Drs’ voice, 難治性てんかん

よくある疑問 てんかんは治るのか?

てんかんが治る確率は?

てんかんに悩む方々にとって「てんかんは治るのか」、「治る確率はどうか」といったことは一番の関心事だと思います。てんかんは異常な電気放電が脳の一部分から発生するものや、全体的に発生するもの、さらには年齢や発作の種類、脳波の状態で様々な分類に分けられます。その分類によって「完治するもの」と「発作を抑えることで治すもの」に分かれます。てんかん診療ガイドラインによると疫学的に約10%の人が年齢とともに完治するてんかんであると言われています。また、Lattanzi等によると70%の人は治療によって発作を抑えることが出来ると言われています。しかしながら、てんかんの種類によってその確率は異なるというのが事実です。

てんかんは完治する?

てんかんは年齢とともに完治すると聞いたことがある方もいるかもしれません。そのてんかんは特発性部分てんかんと言われます。これはさらに2種類に分類され、脳波を取った時に脳の中心・側頭部に尖った波形(棘波)が検出されることが多い良性小児てんかん(別名ローランドてんかん)と、主に後頭部から異常放電を発するPanayiotopoulos型に分かれます。これらのてんかんは、小児で発症しやすく、その後年齢とともに完治すると言われています。その他のてんかんは年齢とともに消失をするのは珍しいと言える為、薬によって発作を抑えていくという方針になっていきます。

てんかんは手術で治る?

基本的には薬によって発作を抑えていきますが、てんかん発作の原因となっている脳の場所を特定でき、かつその部分を切除する場合は後遺症が残らないか後遺症が許容範囲内の時に手術が選択されます。脳の手術部分にもよりますが、海外の調査研究によると手術により約20%~50%の方は発作が収まったようです。日本でも手術後の発作再発率は年間数%であり、10年後も半数の方は発作がない状態が続いています。ただし、脳の手術はリスクを伴うので、もし手術の可能性を考えたい場合は担当の先生とよく相談をする必要があります。

てんかん発作は治る?

てんかん発作を抑えようとする場合、治療としては最初に1種類の薬を少量から開始します(てんかん発作の種類によって最初に選ばれる薬は変わってきます)。その後、副作用等を見ながら少しずつ増量し、それでも発作が収まらない場合は次の候補薬をまた少量から始めます。1種類の薬で収まらない場合は、2種類以上の薬を使うこともありますが、抗てんかん薬を正しく服用することで約70%の方は発作を抑えることができます。しかし中には薬が効かないてんかん発作もあり、一度発作が収まったとしても再発を繰り返す場合があります。このような場合は、現状日本では手術を検討するか、薬による治療で試行錯誤を繰り返していく形になります。

てんかんによる記憶障害は治る?

てんかん発作で苦しんでいる方は、記憶障害について悩んでいる方もいらっしゃるかと思います。実際にてんかんは脳が関連する病気であることから、てんかん発作やストレス、注意散漫、情報処理遅延、反応の遅延等が原因となって記憶を上手く引き出すことが出来ない場合があります。実際に行われる処置としては、

  • 抗てんかん薬によって発作を減らす
  • 抗うつ薬で精神的に不安定で不安な状態を解消する
  • 睡眠の質を改善する

等がありますが、記憶が出来ない、あるいは上手く引き出せないという状態はてんかんを持っていない人でも起こりうることです。その為大きな引け目を感じることなく、まずは先生や医療従事者に相談してみると良いと思います。周りの人達からの理解を得られないと、それがストレスとなってさらに悪化することもある為、周りの人間の理解も必要です。また、大切なことはメモを取るようにするなど、自らの行動によって記憶障害を治していけることもあります。

年齢別に見るてんかん治療の特徴と違い

大人のてんかん治療

初めて発作が起きてから5年以内にまた発作がでる確率は約35%となっていて、2回目の発作が起きた後、1年以内に発作がでる確率は73%となっています。その為、大人のてんかん治療を開始する基準は、通常発作が2回起きた後となっています。女性の場合、出産ができる年齢の為、その点は心配かと思います。しかし、多くのてんかんは遺伝せず、抗てんかん薬を服用していても問題なく健康な子を出産する方も沢山いらっしゃいます。もちろん薬や投与量によって胎児への影響は変わってきますが、基本的には催奇形性の少ない薬剤1種類で治療し、投与量を必要最低限にすることでリスクを下げられます。また、経口避妊薬を用いることもあるかと思いますが、てんかん薬の中には避妊の効果を下げる薬もある為、併用薬は必ず医師または薬剤師にお伝えください。運転に関しては、てんかん発作が落ち着いており、医師が運転可能と診断した場合は運転が許可されることもあります(詳しくは道路交通法や自動車運転死傷処罰法を確認してください)。

思春期のてんかん治療

思春期のてんかんは、治療方針上では小児てんかん(生後1か月から18歳前後)という形で分類されます。思春期にてんかんの症状がでると学校生活や友達との関係が不安になるかと思います。特にてんかん発作が意識喪失を伴う場合やけいれんを伴うものである場合、その不安はさらに大きくなると考えられます。また、勉強面でも記憶障害等が懸念になるのではないかと思います。しかし、どのような発作の種類であっても治療法や推奨される薬剤は確立されており、発作を抑えることは可能です。

記憶障害に至っては心理状況やストレスに依存することが多い為、周りの大人からの理解や家族のサポートによって悪化を防げる可能性があります。

子供のてんかん治療

小児または子供の時にてんかんを発症してしまうと、ご家族はとても心配になるかと思います。ある種のてんかんは子供では発病率が高いと言われる為、けいれんが起きた際、てんかんを疑うかもしれません。しかし子供の場合は熱性けいれん等、てんかんではない症状も多く注意が必要です。治療法に関しては、子供だとしてもしっかりと確立しています。なかには難病と言われる小児てんかんもありますが、全体の10%程度と言われ、頻度は低くなっています。たとえその難病であっても海外では新たな治療薬が注目されていることもあり、発作は十分にコントロールできる可能性があると言えます。

高齢者のてんかん治療

高齢者の場合は、初めてのてんかん発作後も60%から90%が再発する為、1回目から治療を開始することが多くなっています。この点では、てんかんを発症する確率は大人よりも高いと言えます。また、高齢者ではてんかん発作以外にもその他の疾患を持っている方が多く、治療法などが心配になるかと思います。しかし、他の疾患がある場合と無い場合で推奨される薬剤も変わってくるなど、治療法は確立しています。また、腎臓の機能が下がっている方には、肝臓で代謝される薬を使う場合や、逆に肝臓の機能が下がっている方には腎臓で代謝される薬を使う場合がある等、身体に大きく負担をかけないように治療することもできます。

参考Webサイト

Simona Lattanzi, Francesco Brigo, Eugen Trinka, Gaetano Zaccara, Claudia Cagnetti, 

Cinzia Del Giovane et al. Efficacy and Safety of Cannabidiol in Epilepsy: A Systematic Review and Meta-Analysis

Téllez-Zenteno F José, Dhar Raj, Wiebe Samuel. 

Long-term Seizure Outcomes Following Epilepsy Surgery: A Systematic Review and Meta-Analysis

 

Epilepsy Foundation “Diagnosing And Treating Memory Problems”

てんかん診療ガイドライン

 

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